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助けられる人から助ける人へ 荒川区の小・中学生「防災部」が大活躍

2022.01.05
目標11:住み続けられるまちづくりを
目標13:気候変動に具体的な対策を

SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」の中には、「全ての国々において、気候変動関連災害や自然災害に対する強靭性(レジリエンス)及び適応の能力を強化する」という項目があります。

近年、人為的な要因による気候変動が指摘される中、世界各地で自然災害が多発し、生活者の不安は募る一方です。社会全体の防災力をあげるためにはまず、地域防災の強化が必要です。ところが、これまで地域防災を担ってきた消防団はどの地域でも高齢化し、全国共通の悩みとなっています。地域防災を担うリーダーを育成するシステムの構築が急務です。

そんな中、これからの地域防災の担い手として注目されているのが地域在住の割合が高く、知力体力的に頼りになる存在である中学生です。自然災害時には、多くの地域で学校の体育館が避難所になります。避難所運営の面でも地域の小学校にも中学校にも精通している中学生の存在は大きいと言えます。

きっかけは「レスキュー部」

東京都荒川区では、2015年に区立中学校10校すべてに「防災部」を創設しました。背景には区が抱える切実な事情がありました。荒川区には、東京都の地震危険度調査で、建物倒壊や火災など、総合危険度が最も高い「ランク5」と指摘された地域が数多くあり、そのため、住民世論調査でも「行政に力を入れてほしいこと」のトップに常に「防災対策」があがっていました。

こうした地域事情や東日本大震災をきっかけに、2012年に荒川区立南千住第二中学校に「レスキュー部」が創設され、これをモデルに15年、区内すべての中学校で始まったのが「防災部」です。学校の正式な部活動として設置され、サッカー部や吹奏楽部など、他の部活動との兼部を認めていることが特徴です。

初年度から各校で30人程度、区内全校で約300人の生徒が防災部に入部。その後、区内の小学校でも「防災クラブ」ができ、地域の防災活動が活発化していきました。

「避難訓練を一緒にやりませんか」と近隣住民に声かけをしてまわる防災クラブの小学生。

防災部、防災クラブの活動は多岐にわたります。「知識」「技能」「意欲」の向上をバランスよく取り入れ、防災知識を高めるために「ジュニア防災検定」(一般財団法人防災教育推進協会)を受験するなど、学校だけでなく地域の防災リーダーとしての自覚と自信を育んでいます。災部の活動は多岐にわたります。

また、防災部の活動は、区内の消防署が全面的にバックアップし、災害時に住民が活用できるD級消火ポンプ(*1)やAED(*2)の操作訓練もしています。

学校を避難所として開設するための訓練をしたり、地域の高齢者宅を定期的に訪問したりする学校もあります。子どもたちに「一緒に避難訓練をやりませんか?」と声をかけられた地域の人たちは、「孫みたいな子どもたちに誘われてうれしい」と喜んで参加するそうです。

尾久消防署にAEDの操作訓練を真剣に受ける尾久西小学校の「ジュニア防災クラブ」

創設当時、荒川区教育委員会で防災部の創設に関わった末永寿宣さん(現・荒川区立第三日暮里小学校校長)は、「教員が多忙と言われる中、この取り組みが実現したのは、教育委員会と中学校校長会が一体となって取り組んだからです」と振り返ります。そして、これまで継続、拡大してこれたのは町の人の協力と、他の部活動と兼部を認めるなど気軽に楽しく参加できる仕組みにしたことが大きいと話します。

「実践を進めるごとに、防災部の生徒がイキイキとしていきました。活動を通して、地域の人に褒められたり、感謝されたりすることも大きなやりがいにつながり、教科学習で思うように成果をあげられない子どもも防災部の活動には意欲的に取り組むようになっていったのです。この活動には、他者を思いやる気持ちを育み、いじめの芽をつむことにもつながる力があると確信しました」

思わず集めたくなるバッジも人気

その後、末永さんが教育委員会から教育現場に戻り、すぐに取り掛かったのが小学校での「ジュニア防災クラブ」の立ち上げです。小学校の教育課程に位置づけられた月1回の「クラブ活動」の時間を利用して、AEDの使い方講習やサバイバル体験などを実施しています。こうした体験に参加した児童には、修了証としてバッジが配られます。

「バッジは思わず集めたくなるデザインにしています。バッジ目当てでもいいから、子どもたちが防災活動に参加することが大事なのです。AEDでも消火栓でも一度でも経験していると、いざという時に子どもたちは率先して動きますから」と末永さん。

防災部員に支給されるバッチ。「バッチがかっこいい!」と参加する児童も多い。

子どもたちに話を聞くと、「バッジが集まるのが楽しみ。たくさん勉強したんだなあと思える」「いざという時を思い浮かべて活動しています。たくさん技術を習得して、助ける人になりたい」。活動を楽しみながら、地域の防災リーダーに向けて成長している様子がうかがえます。

学校には保護者からの喜びの声も届きます。「子どもが真剣に学ぶ姿勢に驚いています。クラブの日は帰宅すると私たちにも教えてくれるんです。将来にも役立ち、心の成長にもつながっていてありがたいです」。

「防災部」出身の生徒は中学卒業後もメールやSNSでつながり、情報を共有したり、区内で行われる防災関連行事に参加したりするなど、年々、世代間交流も着実に広がっているようです。


外部指導者から火起こしを習う第三日暮里小学校の防災クラブ。「普段できない体験ができて楽しい」

【参考】

*1 災害時に市民が活用できる消火器材の1つで、防火水槽やプール、河川などから水を吸い上げて消火活動を行えるポンプ。

*2 自動体外式助細動器。心臓が正常に拍動できなくなり心肺停止状態になった際、電気ショックを行って心臓を正常な拍動に戻すための医療器具。

≪この記事は『防災教育実践事例集』(社会応援ネットワーク発行)の内容をもとに、あらたに荒川区教育委員会、荒川区立第三日暮里小学校のご協力を得て作成しました。≫

writer:代表理事 高比良美穂

一般社団法人社会応援ネットワーク

「心のケア」や「防災教育」、「多文化共生」を中心に子ども・学校支援を行う社会応援ネットワークの代表理事。朝日新聞社でメディアプロデューサー、若者向け新聞『SEVEN』の編集長などを経て2002年に独立。『子ども応援便り』『がっこう応援便り』などの編集長を歴任し、2011年、東日本大震災の被災地の学校からの要望で避難所にメッセージ号外を配布したことをきっかけに団体を設立。以後、全国の学校や保護者団体と連携し、「学校に今、必要なこと」に応え、情報提供や出前授業などの活動を続ける。2020年、コロナ禍での悩みに応えるためのサイト『こころの健康サポート部』を立ち上げる。

最新著書紹介『図解でわかる 自然災害と防災』

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