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正解のない問いはみんなで試行し対話するためにある エシカル暮らすメイトの記録その2

2021.06.25
※人数制限など、新型コロナウイルス感染予防対策を講じたうえで活動を実施
目標12:つくる責任 つかう責任

6月12日〜18日でおこなわれた、自分も地球も豊かになる「エシカル・ライフハック」をデザインするプロジェクト「エシカル暮らすメイト」。このプロジェクトは、3組の次世代クリエイティブユニットが、環境に配慮した積水ハウスの住空間に7日間滞在し、それぞれの得意分野を生かしてエシカルな暮らしを実践するというもの。

実際にプロジェクトメンバーとして滞在し、トークイベントにも参加する中で感じた、これからの時代の「エシカル」への考え方をお届けします。

前半の記事はこちら

カルチャーがまったく違う3組

「あれはエシカルとは言えるのだろうか?」「エコを謳っておきながら十分ではないような気がする」。エシカルを掲げる活動やブランドを見ると、どうしても一回疑いの目で見てしまう自分がいる。

知識を身につけたり、信念を持って活動を始めたりすると、急に他人のあら探しをしてしまうものなのかもしれない。エシカルブランド同士があまり仲良くなかったり、信条の違う環境活動団体がいがみ合っていたりということも、よく聞く話だ。

「正義」は、ときにぶつかり合う。

今回のプロジェクトで集まった3チームは、全チームもともと知っていたが、だからこそ若干の不安を感じていた。というのも、それぞれカルチャーも哲学も全然違うのだ。

愛情を込めてあえて偏見的な言い方をすれば、モバイルハウスをDIYする建築集団「SAMPO inc.(以下、SAMPO)」は遊牧民のような自由さとテクノロジーをかけ合わせたネオ・ヒッピーのような集団。

“ニュートラルな視点”を届けるWEBメディア「NEUT Magazine(以下、NEUT)」の周りにいるクリエイターは渋谷・原宿界隈のストリートミレニアルズというイメージ。

そして私が関わっている、食卓から地球と自分のwell-beingを考えるコミュニティ「TSUMUGI」は丁寧な暮らしのその先を行く賢い生活者たち、というところだろうか。 違うからこそ面白くなりそうという期待もありながら、一体どうなってしまうのだろうと不安もあった。

活動前の部屋の写真

はじまれば、ひとつ屋根の下

でも、いざプロジェクトがスタートすると、否応なしにそれぞれのクリエーションが重なり合っていく。お互い足りないものを貸し借りしたり、ご飯を分け合ったり。そこからコミュニケーションが生まれた。

SAMPOは、突っ張り棒や積水ハウスの建設現場から出た端材で壁付けの棚を施工。そこに、エスニックな骨董が置かれたり植物が天井から下げられた。 床には裂き織りのラグが敷かれ、何もなかった空間が一気に居心地の良い空間になっていった。

NEUTは、毎日いろんなクリエイターを連れて来たり、身近な人が作っているエシカルな商品をキュレーション。それぞれの専門分野を活かしながら、エシカルな暮らしを楽しく取り組む方法を知ることができた。

TSUMUGIは、洗剤を使わずに食器洗いができるアクリルたわしを編んだ。また、TSUMUGIの持つ畑で野菜を収穫したり、サステナブルな食材をリサーチして取り寄せた。

最終日は、TSUMUGIがエシカルな食材を使った料理をつくり、SAMPOの作った家具と空間で、NEUTがキュレーションしたドリンクやキャンドルとともに、エシカルなテーブルコーディネートを提案。全然違うカルチャーを持った3チームがひとつの食卓を作った。

カルチャーの異なるチームが、互いに合わせることなく、否定もせず、ただコラボレーションしている姿が、単純にいいなと思う瞬間だった。

失敗やプロセスにこそ共感や学びがある

7日間、いろんなトライアンドエラーや、チームの垣根を超えた対話があった。

プロジェクトを振り返ったトークイベントで、TSUMUGIの塚本さんは、「洗剤を使わなくてエコだと思ってアクリルたわしを編んだのですが、あとからリサーチしてみたら実はマイクロプラスチックを出してしまうという情報も出てきて、ショックだったけれど学びになった」と活動をシェア。

それに対して「失敗こそ相手に共感や学びを与えてくれるきっかけになる。それも追体験できるのがこのプロジェクトならではで、すごくいいことだと思います」とTakramの渡邊康太郎さん。

ジャーナリストの佐久間裕美子さんも、「正しいとか間違いとかがあるわけではないから、それを恥じたり、後ろめたく思う必要はないのです。みんなで学んでいけばいいから」と話されていた。

環境運動家の辻信一さんが言っていた言葉が印象的だった。「人生って全部“途中”。わからないことに対して、すぐに正解を求めようとしなくていいんです。自分の身体を使って体感したり、相手と本心で対話していくことが何よりも大事」。

それぞれが考え続ける、正解のない問い

それぞれのエシカルライフハックに対して、「これってどこがエシカルなのだろう?」と考える部分もあった。でもその背景にある思想を聞くと、その人にとっての「エシカル」が見えてきて、なるほど、と腑に落ちていった。

「僕たちは、そもそもエシカルっていう言葉すら知らなかった。でもみんなバックグラウンドが全然違う中で、思想とか美学の共有をしたり、踏み込んだ話ができたのがよかった」と、SAMPOの塩浦さんも振り返る。

CO2の排出量を減らすための正解はあるかもしれないが、「エシカル」に正解はない。だから、みんなで試して対話して少しずつアップデートしていくしかない。

「インディペンデントな活動をしている人たちを紹介するとき、これが正解ですとは決して言わないようにしている。こういう人もいるけど、あなたはどうする?という問いを投げかけたいから」と、NEUTの平山さん。

エシカルファッションプランナーの鎌田安里紗さんも、「これをやれば完璧っていうことはなくて、ずっと向き合って、考え続けることがエシカルだと思います」。

エシカルな暮らしを実践する上で、「こうあるべき」という正義のヒーローは、必要ないどころか、本当は存在すらしなかった。

プロセスや失敗も楽しみながら、人それぞれの「エシカル」を知った7日間。私の手元には、作ったアクリルたわしと蜜蝋ラップ、ファーマーズマーケットで買った青梅、それからたくさんのインスピレーションが残った。

さあ、自分の「エシカル」はなんだろう?どんな暮らしをつくっていこう?

Photo by Misii / NOSE art garage ※メイン写真、活動前の写真除く



プロジェクトの活動前夜のオンラインイベント第1回
2021年6月11日(金)19:00-21:00

プロジェクトの活動を振り返るオンラインイベント
2021年6月19日(土)19:00-20:45

writer:若尾真実

慶應義塾大学卒。在学中、バングラデシュに渡航しエシカルブランドを立ち上げる。PR会社を経て、ファッションスタートアップ企業へ参画。2020年に独立、フリーランスの編集者・コピーライターとして、ブランドや企業のブランディングに携わる。

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