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インクルーシブ教育、日本でどうすれば進むのか 「やってあげる」から「やらなきゃいけない」へ

2021.12.20
朝日新聞編集委員・宮坂麻子
目標4:質の高い教育をみんなに
目標17:パートナーシップで目標を達成しよう

SDGsのゴール4では、「質の高い教育をみんなに」という目標が掲げられています。日本でのインクルーシブ教育はどうすれば進むのでしょうか。12月4日に開かれたオンラインイベント「凸凹のある子の未来を輝かせよう~GIGA時代だからできる進学と学び」(朝日新聞社主催)に米国ニューヨークから登壇した、学校心理士のバーンズ亀山静子さんに聞きました。(聞き手、宮坂麻子・編集委員)

※文末に書籍「学びに凸凹のある子が輝く デジタル時代の教育支援ガイド」プレゼントの案内があります

宮坂麻子・編集委員

アメリカの現地の学校や日本人学校で子どもたちを支援されていらっしゃいますが、日本で欧米のようなインクルーシブ教育(障害の有無にかかわらずどんな子も共に学ぶ教育)が進まない理由はどこにあるのでしょう。

バーンズ亀山静子さん

日本の学校や先生方とお話ししていると、「本当はやらなくていいことをやってあげている」という意識がまだ強いんですね。2016年に障害者差別解消法が施行され、教育現場では、合理的配慮をすることが義務づけられました。LD(学習障害)で読み書きが厳しい子やADHD(注意欠陥・多動性障害)で落ち着けない子なども、学びやすいように特性にあった配慮をしていかなければならない。

でも、この「配慮」という言葉がよくないんです。「『配慮』だからできる範囲でいい」「やれないものはやれないよ」という状況を助長してしまっているように思います。

「合理的配慮」という言葉さえ知らない先生方も、日本の学校現場ではまだ多いと感じます。

そうですね。私は日本の大学や大学院でも教えていますが、授業では「合理的配慮」の「配慮」を「人権保障」に読み替えなさいと指導しています。つまり「合理的人権保障」。「やらなきゃいけないもの」なんだと。

アメリカの学校とは、かなり意識が違いますか。

州や学校、教師によっても違いはありますが、アメリカでは、きちんと法律的な根拠があります。今回のイベントでもお話ししましたが、アメリカの特別支援教育は、権利保障が基盤です。通常教育の教室で学ぶということが優先順位のトップ。つまりインクルーシブ教育であることが最優先されるわけです。

さらに、指導は診断名や本人の要求ではなく、学校でのきちんとしたアセスメント(客観的な評価・分析)の結果に基づいて、保護者も入って一緒に、必要な対応を決定します。「学校にできるかどうか」ではなく、「その子に必要かどうか」で決まります。個別指導計画にあたる「IEP」は法的文書に位置づけられ、支援介入の詳細とともに、合理的配慮の内容も、授業とテストにわけて明記されます。納税者への説明責任として、必要であることの根拠を示さなければならないのです。

合理的配慮が不適切であれば、権利保障の観点から裁判も起こせるわけですね。

はい。権利保障の面だけでなく、学校で適した指導が行われなかったために、勉強や学校生活につまずいて、不登校、ひきこもりとなれば、それは将来の納税者を減らしていることにもつながります。発達障害や不登校の子どもたちが年々増えている中で、日本の文部科学省ももっとそういう視点も持って、早急に対策に乗り出していただきたいです。

アメリカでの学習や試験での合理的配慮にはどのような例がありますか。

「アコモデーション」と「モディフィケーション」があります。アコモデーションは、通常のことを学ぶのに必要な調整や変更を指します。座席の変更や、聴覚や視覚など刺激を軽減するための工夫、コンピューターの使用もここに入ります。テストでの問題の提示や解答の仕方、形式の変更、時間延長や別室対応もアコモデーションです。

一方で、モディフィケーションは、評価基準自体の変更などです。例えば、テストを簡単にしたり問題数を減らしたりします。モディフィケーションは、アセスメントにもとづく特別支援教育を受ける資格のある子のみが対象となります。

アコモデーションだけで済むのであれば、必ずしも特別支援教育の対象にはなりません。通常学級で、合理的配慮を提供するだけです。ADHDなどの診断がついていても、実際にはアコモデーションだけで解決している例がとても多いですね。

日本では、まだ「配慮が必要なら特別支援学級へ」と言われる例もありますし、通常学級ではまだ、そこまで柔軟な対応はなされていない気がします。

アメリカではコロナ前から端末を日常的に使っている学校が多くありましたが、コロナでさらに加速しました。グーグルクラスルームのようなものを使って、課題や資料も配布される。配慮が必要な子にはテストも学校の端末を使う例が増えてきて、あらかじめ入っている拡大やラインリーダーなどの機能は、自由に使うことができます。テスト前にその使い方の指導も行います。

日本では、まだ「配慮が必要なら特別支援学級へ」と言われる例もありますし、通常学級ではまだ、そこまで柔軟な対応はなされていない気がします。

すごく大事だと思っているのが、教えやすさではなくて、学びやすさで方法を選ぶということ。その子を中心に置くことです。

インクルーシブ教育には、教育のゴールは同じでも、そこへ向かう方法はデジタル、アナログ、いろんな方法が準備されていて、その子に必要な方法が選択できるという環境づくりが大切になります。日本も法律ができたんですから、そうした環境がなければ、駆け込んで相談して対処してもらえるような窓口が必要ではないでしょうか。法に目を向けて子どもの学ぶ権利として保障して欲しいですね。

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speaker:バーンズ亀山静子

ニューヨーク州認定スクールサイコロジスト

ばーんず・かめやま・しずこ 米国ニューヨーク州認定スクールサイコロジスト。幼稚園から高校までの子どもの発達・教育・適応などの仕事に携わる。ニューヨーク日本人教育審議会教育相談室の相談員。早稲田大学大学院、東京家政大学大学院の非常勤講師も務める。「UDL 学びのユニバーサルデザイン」(東洋館出版社)の翻訳者でもある。

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